インドの神様とか思想とかヨーガとかに興味があってちょっとのぞいてみると、かならずといっていいほど「タントラ」「タントリズム」という言葉にぶちあたります。
ちょっとエッチな罪深い意味があるっぽい響き。日本にもかなり影響した思想なんだけど。。。
よくわからないって人が多いんじゃないかなぁ。。 |
▼「タントラ」って何かね?
「タントラ」っていうのは、もともとは「縦糸」を意味するサンスクリット語。糸が紡がれて布になるように、教義が一体化したもの、みたいな意味になっているので、なにか具体的に「タントラ」という宗派がある。というわけではないんですよ。その辺がまたインドっぽいですが。
というわけで、タントラとよばれるものにもいろいろあるんですが、
ヒンドゥー教でいう「タントリズム」とは簡単に言うとですね
「神様となんとか一体化して幸せになる方法」みたいなもんですよ。
9~12世紀位に一時人気がでた思想なんです。
古典的な「正統派」っていうのは、アーリア系のバラモン教の流れを含んでいて、
身分も地位も高い方の高度なわかりにくい神学なんですよ。俗に言うインド哲学ってやつです。
だけどね、そんな難しそうな一部の人たちだけのものよりも、もっとわかりやすい方法ってないかなあ、
ってところで出てきた考えが「タントラ」と総称される考え方なんですよねー。
人間が持っている欲望とか物質的な肉体そのものってのを否定しないで、その中にこそ神がいるんじゃないか。ということで、呪術や性的儀式みたいなことまで含まれていたみたいです。
日本にもおんなじ流れがあって、密教ってのがこのタントラに相当するかんじです。
これは当時のシヴァ派、ヴィシュヌ派、仏教にもとても強い影響を与えました。
思想的には単純なもんです。
世の中って、男性原理と女性原理の2つが交わってできている。という考え方があるんですよ。
その大元はもちろん神様なんですが、神様はその原理そのものであらせられるんですよ。
だったら自分もそうなったらよいですよ。
「男性原理=男性の肉体」「女性原理=女性の肉体」「合一=セクース」⇒(´Д`)神様パワー!
実際にセクースをしなくても、思想的に神と一体化できればいいんで、 ハードな儀式とかはその後廃れて今は思想のみが生きているってことになっています。
#新興宗教の思想家たちはこの部分だけ強調したような団体つくってたりしますけどね・・・
▼タントリズムと各宗派
正当派ではない考え方で儀式とかやるっていうと、 キリスト教的で言えば、反キリストな黒魔術みたいなイメージがうまれちゃうかもしれないけど、 神と一体化する、っていう思想的なところは一緒だからか、両者で宗教戦争みたいなことはおこってないっす。 むしろ時代と共にヒンドゥー教が形成されていく中で正統派に吸収されていって、 今のヒンドゥー教では思想として残ってるかんじ。
「神と合一」という部分が思想的に僧院とかでいろいろ研究されて発達したんですな。
タントリズムの中で一番取りざたされて、今の「タントラ」をエッチっぽいイメージにしてしまったのが
シヴァ派の「左道」とか、「シャークタ派」(性力派)の信仰です。
前者は「 セクースによる男性原理と女性原理の融合、そのパワーで神になる」という思想をそのまんま実践に移したりしてたみたいで、 性的儀礼やったりするハードな方々だったようです。
#一方「右道」と呼ばれる方々は、思想的には一緒だけど、あくまで思想だけの産物であって
#実際にそんな行動にでるなんてもってのほか!という方々でした。
後者の「シャークタ派」は、前者のシヴァ派ともとても関係が深いんです。
「シャクティー」とは性的エネルギー、つまりエッチパワーでして、男性神ではなく女神様が司ります。
男性神のエッチパワーは女神様が握っているというわけです。
ってことは男性神よりも女神様のパワーのほうが強いじゃん!女神様拝んじゃえ!ってかんじで
「シャティー(性力)」を拝む人たち=「シャークタ派」みたいな。
シヴァ派の「左道」も「シャークタ派」も どっちもどっちでやっぱやることは一緒だったみたいで、いろいろ儀式とかやってたみたいですが 、その儀式には性的儀礼も含まれていたようで、そういった部分だけが強調されているみたいですね。
別にタントリズムの要素がはいっているからといってそんなハードなことばかりするわけではなく、
あくまで「思想」としての位置づけだったりしますし、神様と合一する方法はいくらでもあるわけで
シヴァ派だけじゃなくヴィシュヌ派にも要素は入ってます。
「男性原理と女性原理の合一が神パワー」って考えはもともと基盤としてあったので
シヴァとパールヴァティーや、クリシュナとルクミニー(ラーダー)とのラブシーンが
神話に重要な要素になってたりもするのです。
▼性的儀式の内容をチラリ。
タントラとはインドの性の秘密の儀式。と言われるようになってしまったひとつの原因として
有名なのが、シヴァ派の左道系の儀式の一部がありますです。
実際に性的儀礼も行っていたのかはよくわかりませんが。やってたかもしれません。
・神と一体化するために肉体的に男性原理と女性原理を融合しる→エッチパワーで神となる
・正統派が禁止してるようなことを率先してやる→タブーを破ってより自由意志を
ただ、これはただのエッチじゃなく、神と合一になるための神聖な儀式なわけですから
フツーにヤるのではだめです。 呪文も精神力も環境も必要なのです。
女性も、普通の女性じゃダメなんですよ。 セクースする女性は女神様の化身なのです。
というわけで、具体的にはどんな儀式の内容かというと、
パートナーとなるのは月経中の不可触選民(アウトカースト)の女性。
輪になって座って、まず師が女神の化身である女性と交わり、そのときの精液と血がまざった体液をその場にいる者たちで飲み、その後皆で交わります。
これだけきくと、ほんとヤヴァイ儀式ですな。
まあ、とはいえわざとこんなことをした理由ってのもあるんですよ。
インドには「浄、不浄」の概念があり、「汚れ」と接することはとってもタブーとされています。
そのような「タブー」をわざと破ることで、より自分が物事から解き放たれ精神的自由を得る。という意図もあったようですな。 酒、肉、女、死体、身分否定なんでもあり。
穢れということでは、墓場での死体を使った儀式もあった様子。
ただ、これはあくまで宗教的な「儀礼」なので、
当時の人たちがみんなこんなことしてたわけじゃないですよ。
よい子のみんなはこんなことしちゃだめですよ。
こんなことしなくても人間って十分幸せになれるとおもうんですが。
最近だと、 なんか新興宗教とか変な団体がこういった側面だけを掘り起こして
「タントラで幸せになりましょう」とかいっているようなセックス集団もあったりするようですのでご注意ください。
▼タントラに必要なモノ?
つまりカミサマとなんとか一体化するためにいろいろなことをするんですがね、
そのためには、儀式とか、呪文とか、瞑想するためのアイテムが必要になってくるわけです。
呪文のことを「マントラ」、瞑想するためのアイテムには「ヤントラ」っていう図形(カミサマの存在を表した曼陀羅みたいなもんです)があったりします。
これについてはまた別の場所で説明しますので今日はこのへんで。
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